座間市の市営住宅で汚水桝詰まりで高圧洗浄をしました。
1ヶ月前に同じ所で高圧洗浄をしたばかりなのにまた呼ばれたので何かあるなと思いながら作業をしました。
再び詰まったので、考えられる原因として、
①排水管内の勾配が取れていない
②排水管に異物が詰まっている
③排水管が割れたり、抜けたりして砂利が詰まっている等が想定されます。
以下の写真をご覧ください。
高圧洗浄後にトイレットペーパーを流したところ、トイレットペーパーが汚水桝の上で止まりました。どうも勾配がいまいちのようです。
排水管や汚水桝の勾配が取れていない場合は、流れが非常に悪くなります。(参考:東建コーポレーション)
水はオーバーフローで流れてもトイレットペーパーなどの固形物は勾配が取れていないと流れません。
水道(上水)の場合は水圧がかかっているので、さほど勾配は関係ないのですが、排水管で勾配がとれていないことは致命的です。
また、地震などで地盤が動いて勾配が変わることもあり得ますので、その際は工事が必要になります。
また、隣の家に人がいない状態で、共用の桝の水量が減っていることも大きな要因となっているようです。
以前は隣人が流していた水が、現在は全くなくなって水量が減ったことにより、トイレットペーパーなどが流れにくくなります。
水量も重要で、やはり固形物と流す際の水の割合で詰まるかどうかも変わります。
[caption id="attachment_534" align="aligncenter" width="225"] 高圧洗浄機[/caption]
[caption id="attachment_535" align="alignleft" width="225"] 高圧洗浄前(詰まりあり)[/caption]
[caption id="attachment_536" align="alignright" width="225"] 高圧洗浄後(詰まりなし)[/caption]
【市営住宅】
市営住宅だったので、今回の作業費の請求は市の水道課へすることになりました。
市役所に請求書を持っていき、担当者に説明もしました。
汚水桝の上でトイレットペーパーが止まることを説明しましたが、おそらく汚水桝と周辺の管をやり直すことになると思われます。
【桝の補修】
市によると汚水桝を交換するようです。
桝交換について説明を記載します。
まず、汚水桝の底が見えるまでスコップで土を掘ります。桝底と周辺の管が全て出るまである程度の周りを掘ります。
その際の注意点としては桝周りにガス管、給水管、給湯管、電気管等がある可能性があるので極力手掘りで行います。
電気工具でこれらの管に当たったら一発で管が割れてしまいます。
ただし、ハツリ機にスコップの先端を付けて、掘ることも可能です。
周辺に配管などがなく、岩盤などで固い場合は電動工具を用いて掘ることも有ります。
次に、桝周りの既存配管を切断して桝を取り除きます。
そうした上で新規の桝を設置し、切断した管に新規の塩ビ管を糊で接着して繋げます。その際に勾配が取れるように注意します。
汚水管(トイレ)の勾配は水が流れる方向へ1m毎に1㎝以上下がればOKです。雑排水(生活排水)は2m毎に1㎝でOKです。しっかり付けて糊が乾いた後に水を流してみて、水溜まりが無く、スムーズに流れれば完了です。
水の流れを確認したら土を埋めます。掘った時より、土の量は減っているので土を足しながら踏み固めます。ちなみに管径は汚水管が75mmか100mm、雑排管が40mmか50mmです。
たまに排水管に糊を付けていない施工も見つかりますが、排水管が抜けてしまって管の外に水が漏れるので絶対に糊は付ける必要があります。
桝交換は弊社でも可能ですが、今回は市営住宅でしたので、市の方が行うそうです。
【管内の勾配確認】
管内の勾配が取れているかは水を流してもわかりますが、はっきり見ようとすれば管内カメラを入れればよく分かります。カメラで見ればリアルタイムに水溜まりもわかりますし、管が割れていないか抜けていないか、木の根っこが生えていないか等もわかります。高性能なカメラは画質も良いですが20万円ぐらいする機材なので高価です。
詰まった原因などは、やはり外から見てもよくわからないので、管内カメラを入れるのがベストです。
神奈川水道コラム~雑談と世間話~
【排水管の課題】
給水・給湯と違い、排水管は下り勾配を取る必要がありますので、一番気を遣う作業です。
横に1m伸ばすと、高さを1㎝以上勾配を付ける必要が有ります。(水勾配:1/100を取る必要があります)
勾配を付けることが出来ないと排水が流れず詰まる恐れがありますが、床下とスラブ(コンクリート)までの距離が短いと勾配を取るのが大変です。基準は『東京都排水設備要綱』(令和4年3月改訂)によって定められています。
床バンドといって高さを調整するバンドがあるので、微調整をしながら勾配を調整します。
新築工事でさえも、この水勾配が上手くとれておらず、入居してしばらくして配管が詰まっているようだという事で調べてみると、水勾配が適当にされているという事がニュースになるほど、水勾配はとても大切です。
しかし、水勾配の高低差が大きければいいという訳でもありません。適切な水勾配を取る必要は、流れさせる内容物にもよりますが、雨水などですと、勢いが付き過ぎて、排水溝に入らず溢れてしまうこともあるからです。
現場を見て都度、対応方法をご提案致します。
豆知識「排水管の詰まりを起こさないために」
生活排水は、大きく分けて、トイレとその他。
トイレは言わずと知れた尿や便、それとトイレットペーパーです。盲点なのが、このトイレットペーパー。
実は、「水に溶ける」のではなく「水でほぐれる」紙なのです。(参考:paper&green)
トイレットペーパーはティッシュペーパーと違い、濡れるとあっという間に繊維が崩れてほぐれます。そして、下水管へ流れていくので詰まりの心配はありません。
しかし、大量のトイレットペーパーを一気に流した場合、全部ほぐれてくれる訳ではありません。一部の乾いたトイレットペーパーが配管の壁面に着き、詰まりのきっかけを作ります。
また、固い便や、一度に大量の便とトイレットペーパーが流れることで、水の入るスペースが確保されないと、排水管に何かしらこびり付いていた場合に、そこに引っ掛かってしまう事も想定されます。
その他に分類しましたが、お風呂や洗面所は、石鹸(液体も含む)のカス、髪の毛、体の汚れなどが排水管の詰まりの原因となります。髪の毛など手で取れるようなゴミは、排水管に流さずゴミ箱へ捨てるのがとても大事です。
また、キッチンは料理に油を使います。ご存じのように、油は温まると水の様にサラサラになります。逆に言うと、冷えると固まってしまうのです。そして、食器に付いた食べかすやご飯粒。
これらも排水管にそのまま流してしまうと詰まりの原因となるのです。出来るだけ、排水口にネットを掛けたり、食べ残しは三角コーナーなどで直接排水口に流さないようにしてください。(参考:MISAWA)
豆知識「集水桝・コンクリート桝」ってなに?
「集水桝」とは、屋外の排汚水の合流点や分岐点に設ける桝のことで、排水桝とも呼ばれます。
この「集水桝」で雨水排水管などを合流させることにより、ゴミなどを集めやすくし、維持管理がしやすくなります。
また、排水勾配が変わるところや、道路や敷地の境目に設けることで、泥などが配管内に流れ込まないようにコントロールすることができます。
また、汚物を滞留させない汚水桝もあります。
「集水桝」は、コンクリート製の物が多く、現場打ちで作成されることが多かったのですが、作業性や精度の問題があり、コンクリート2次製品(既製品)が多く使われるようになってきています。
狭小地の場合には、コンクリート製品が使いにくいこともあり、塩ビ製の小口径桝などの製品もあり、現在の建築現場では、塩ビ桝が主流で使用されています。(引用:東建コーポレーション)
豆知識【コンクリート桝から塩ビ桝の交換】のススメ
[caption id="attachment_5694" align="aligncenter" width="300"] 真ん中の丸いものが塩ビ桝です。[/caption]
排水を集水する桝なので、とてもコンパクトに出来ています。
現在、コンクリート桝から塩ビ桝の交換依頼が多くなってきています。
昔は塩ビ桝などなく、コンクリート桝が標準でしたが、コンクリート桝の場合、約 15 年~20 年程で劣化が進み ヒビが入ったりします。そこから水が漏れたり木の根が入り込んだりと、詰まりの原因となります。
また、コンクリート桝は重いので自重で沈んでいきますが、塩ビ桝は軽いのでそのようなことはありません。その為。現在設置する下水桝は、塩ビ桝に変わってきています。
塩化ビニル管の寿命としての耐用年数は50年以上とされていますので、コンクリート桝より断然長持ちで、凹凸が少ない分、流れも良くなっているという事も関係しているのかもしれません。
(参考:塩ビ桝)
豆知識【コンクリート桝と塩ビ桝の違い】ってなに?
[caption id="attachment_3463" align="aligncenter" width="320"] コンクリート桝[/caption]
[caption id="attachment_3326" align="aligncenter" width="320"] 塩ビ桝[/caption]
コンクリート桝の場合、経年劣化でヒビが入ってきます。コンクリート製品の劣化速度は、気象条件や材料などによって異なりますが、一般的には50~60年程度と言われています。
何も処置をしない状態で中性化してしまうまでが約60年とされていますが、ひび割れや亀裂から漏水(水漏れ)し、耐用年数よりも早く劣化してしまうケースも少なくありません。(中性化:形を保てなくなる)
そして、排水管は塩ビパイプが使われていますので、コンクリート桝との接続部は、桝へ差し込んだパイプの隙間をモルタルで埋めるようになります。
モルタル部分は桝自体の耐久年数とは別に風雨の影響があり、地震などの動きによってヒビが出来てしまいます。このヒビ割れの箇所に木の根っこが生えてきたり、トイレットペーパーが挟まって、管内に詰まりを引き起こす要因となります。
このヒビ割れの箇所に木の根っこが生えてきたり、トイレットペーパーが挟まって、管内に詰まりを引き起こす要因となります。
また、コンクリートは重量があるので、地震等があったときに自重で沈んでいきます。
桝が沈むことによって、接続されている排水管の勾配が変わり、排水が流れなくなることもあります。
塩ビ桝の場合、経年劣化で割れることはあってもヒビが入ってくることはありません。
また、排水管も塩ビなので、糊で接着すると、桝と管が一体化して隙間が出来ません。
塩ビ管は軽量なので、自重で沈んでいくこともありません。
このような理由で現在はコンクリート桝から塩ビ桝へ切り替えることが一般的です。
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